エピソード023 <会議が嫌い>

 私は生来おしゃべりで、報告書を書いたり読んだりするよりも、集まって会議をして決める方が好きでした。ところが、最近この「会議」が嫌いになってきて困っています。ようやく対面での会議が増えてきて直接会うことができるようになったのに、 会議の予定が入るとちょっと気分が重くなることがあります。なぜ、「最近」会議がいやになってきたのでしょう。以前と何が変わったのか。今日はそのあたりを考えてみます。

まず思い浮かぶのが、最近の会議ではみんなPC を持って会議室に入り、電源を確保し、会議スタート前にモニターを立てます。 まるでパソコン教室のようで・・・異様です。テクノロジーの進化だから慣れないといけない、とも思いますが、私が本当に困っているのは「目が合わない」ということなんです。アイコンタクトがあれば、その人が賛成っぽいのか反対ぎみなのか観察しながら言葉を選ぶことができますが、 それができないと感情のない言葉をただ読み上げるだけのような発言になり、まるで国会答弁ですね。今の時代、PCを会議室に持ち込むなとは言いませんが、発言するとき・聞くときは顔を上げていてほしい。そうでないと会議の秩序が保てない・・・議事をタイプしている人は発言と作業が同期していますが、 たまにいませんか、会議とは全然関係ないパソコン作業をしているミエミエな人。もう自分の作業に没頭してしまっていて顔をモニターから上げません。会議中にメールでやりとりをしていることを隠すこともなく、隣の同僚を肘でつついて自分のモニターを見せながら「こんな注文が来ちゃったよ」と言った確信犯を私は見 ました。 こういう人がいると会議がいやになっても仕方ないですよね。

PCの次はスマホ。昔はこいつめに会議を邪魔されることがありませんでしたね。なんか懐かしいです。とにかく、会議中に着信があった場合は、受信しないで後でコールバックするべきです。 目の前の会議メンバーは時間を合わせて集まってくれたメンバーであり、中には遠方からそのために来訪された方も含まれている場合もあります。社内も社外も関係ありません。たまたまその時間に電話をかけてきた方と、目の前に集まってくれたメンバーのどちらを優先すべきかは自明です。だから会議中の着信に、 口元を手で覆ってヒソヒソ声で「今、会議中なんでこちらからかけ直します」なんてナンセンス(そのヒソヒソ声が妙に聞き取れる)です。ほっときゃキミよりかわいい声で「現在、電話に出ることができません」って言ってくれるのですから。どうしてもとらないといけない電話がかかってくる可能性があるときは、 「出なければいけない電話が来るかもしれません。その時は少々中座させていただきます」とあらかじめ言っておきましょう。
会議中の着信にガバッと立ち上がり、スマホを操作しながら出口に向かってダッシュ、出口のすぐ外で「お世話になりますぅ!」って、 忙しいビジネスパーソンを演出しているとしか思えません。それをやられると議事を追っている思考が停止するのです。迷惑なんです。やめましょうね。

そして、最近の会議は制限が多すぎます。ハラスメントとかコンプライアンスに気遣いながら発言しなければならないので、 発言を反射的にしてはいけない雰囲気があります。適切な言葉を使い、禁忌な内容を含んでいないかを考えてから発言する。これも時代ですから文句を言ってもしょうがないと思います。思いますが、私は過剰な制限が会議室から笑いが無くなっている理由ではないかとも思っています。
もちろん、 会議に笑いが絶対なければならないわけではないし、時間内にきちんと結論が出ればいいのでしょうが、考えてみてください、これから私たちは人生であと何回会議に出席するのでしょうか?荒涼殺伐とした集まりより適度にユーモアがあった場であった方が私はいいアイディアが出ると思います。 「コネクタの極性をオスメスと言うのは性的な表現ではないか」と聞かれたことがあります(あきらかに考えすぎです)が、もう少し言葉使いにも表現にも寛容になって、適度なウィットを楽しみ、柔軟なディスカッションをしたいですね。会議に笑いが少ないことが、日本の生産性国際競争力を落としているのではないか、 と、 私は本気で考えています。つまんない会議は眠くなりますから。
また、最近は会社名を出さない(A社、B社など)で会議を進行して欲しいと言われるケースがあります。 社名を知ると商流コンフリクトの対応が難しいということですが(とかく日本人は何かに制限されるのが好きですよね)これでは議論が縮こまってしまいます。
「いじめにつながるからニックネーム禁止」というばかばかしい小学校の報道がありましたが、「関係する企業の社名開示禁止」とロジックが似ています。 ニックネームを禁止してもいじめは起きるでしょうし、エンドの社名を秘匿してもおそらく何も変わりません。要は出席者の自覚です。教育現場はニックネームで親しく呼び合いながらいじめを減らす取り組みをするべきですし、 ビジネスでは全体の商流を共有しつつ「この会議室を出たら会議中に出た社名は他言禁止」のようなルールを徹底させて、オープンなディスカッションをするべきですね。ましてやわれわれは電池のビジネスをしている(燃える物を取り扱っている)のですから、商流コンフリクトにビビるよりも、 電池がどこでどのように使われているのかをしっかり把握して、エンドや消費者の安全を優先するべきだと思います。

しかめ面で目も合わせず「情報共有しましたよ」的な儀式のような会議ではなく、スマホの電源を切り、PCのモニターから視線を上げて、会話を楽しみながら会議をしたいですね。 自由な発言の中で、思ってもみなかった人から思ってもみなかった素晴らしいアイディアが出る・・・こういうことが対面の会議の醍醐味だと思います。(了)



「老いた電池売りの独白」...フューロジック代表・田中景が、日米で40年近く電池の営業をしてきて思う、電池の現在過去未来、営業とは、国際感覚とは、そして経営とは、、を綴った新連載です。

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