小型リチウムイオン電池の需給状況(2021年2月現在)に関して          

新聞紙上等で報道されています通り、容量10Wh以下の小型リチウムイオン電池の需給が非常に逼迫しています。原因としては「① 特定の原料の不足」、「② EVなど大規模需要家の需要膨張」、「③ 上位サプライヤーの生産機種の変化」が考えられます。


  1. 特定の原料の不足・・・コバルトとニッケルが不足しているとされます。コバルトは生産が極端にコンゴ民主共和国に集中し、その採掘工程で児童労働が常態化しているということで、同国からの調達はSDGsの立場と相容れないとされています。日本企業にとって調達のハードルが高くなるなか、中国勢は備蓄用まで積極的に買い進めているようです。また、ニッケルはステンレスの原料でもあり、ステンレス鋼は不足していないのですが、電池に使われる「硫酸ニッケル」は精錬の初期の段階でステンレス用とは切り離されて生産されるので電池用に限り不足が生じています。


  2. EVなど大規模需要家の需要膨張・・・各国政府や大都市が「ガソリン車ゼロ化」に対して明確な目標期限を設定する動きが広がっています。特に欧州市場では経済復興計画「グリーンリカバリー」のプログラムで、電動自動車購入者に対する補助金政策により、20年1-10月の新車販売が前年比マイナス27%と低迷するなか、電動車の売上は同期で前年比2.1倍を記録したということです。さらに中国市場では走行距離を抑えた「50万円EV」が好調で、高級車だけでなく、日常使いの大衆車にも電動化の流れが来ています。日本では実感できないEV化の波が想像を超えるスピードで世界的に進んでいると言えそうです。


  3. 上位サプライヤーの生産機種の変化・・・一例としてPanasonicが2011年からほぼ独占的に電池を供給してきたTeslaに対し、2019年にLG化学が中国市場で供給を開始しました。この結果、LGはTeslaに納入する21mm径のセルを生産するため、従来の18径電池の製造ラインを相当量シフトしたと思われます。現在、18径セルは世界的に逼迫しており、中でも最大需要用途である電動工具のセルのリードタイムは非常に長くなっています。


フューロジックは「必要な電池を必要なだけタイムリーに」お届けすることを全力で努力して参りますが、需要家様におかれましても上記の状況をご理解いただき、早めの手配をご決断いただきますようお願い申し上げます。

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