皆さんはビリヤードのスリークッションという競技をご存じでしょうか。穴ぼこ(ポケット)に球を落とすゲームではなく、ポケットの無いテーブル上でボール3個でするゲームです。今でも韓国などではメジャーですが、ルールが非常に複雑なせいか日本では競技人口が少なくなってしまいました。でも私は中学生の頃から大好きで、高校時代からビリヤード場に入り浸って・・・ご想像通り、あまりいい学生ではありませんでした。 しかし、20年以上暮らしたアメリカではポケットばかりで(映画「ハスラー」もポケットですし)スリークッションのテーブルはほとんどありませんでした。だから15年前、アメリカから帰国した私が住居と仕事の拠点を確保して、次にしたのがスリークッションができるビリヤード探しでした。ネットで調べたところ、新大久保に元世界チャンピオンが経営しているビリヤードがあり、私も名前だけは知っていたので、さっそく出かけてみました。久しぶりのスリークッション、私はワクワクしていたのですが・・・そこにいたのは常連さんばかり、私のような見ず知らずの男と遊んでくれる人はいなくて、私は所在なく見学席で人のゲームを見ていました。もう帰ろうか、と思っていたところに・・・ 「お、見ない顔だね。初めて?」 突然、背後から男性としては高い声で呼びかけられました。振り向くと60がらみでツイードのジャケットを着た白髪交じりのダンディがニコニコしています。 「いえ、初心者ではないのですが20年以上やっていないんです」 「へえ、じゃ、海外赴任でしょう。どこ?」 「アメリカのニュージャージーです。・・・え、海外赴任だって分かりますか?」 「オレももとは商社だからね。で、相手がいないんだろう?オレがつきあうよ」 この人が浅野さん・・・通称「アサヤン」でした。3ゲームほど終えると冗談が言い合えるようになっていました。そして「じゃあ、まだこの辺の店、全然知らないんだろう?教えてあげるからつきあいなよ」と、ビリヤード裏手の薄暗い地下の居酒屋に。並んでカウンター席に座ると、アサヤンはいきなり私をびっくりさせたのです。 「田中ちゃん、オレね、もうすぐ死ぬの。ガンなの。だからおそらく田中ちゃんが人生最後の友達」 「え、本当ですか?・・・またぁ、からかっちゃイヤですよ」 「本当なの。冗談だったらいいんだけど、まだ64だからね。で...
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